2022.12.28

「リスキリング」とは?学習することの重要性について考える

「リスキリング」又は「リスキル」という言葉を目にしたことはありますでしょうか?
最近新聞やニュースでも取り上げられることの増えているこの言葉、先日大賞が発表された「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補にもノミネートされていました。
大賞とはなりませんでしたが、2022年10月3日には岸田首相が臨時国会の所信表明演説で発言し、翌4日には日本経済新聞の朝刊の一面も飾っていた「リスキング」、日本経済新聞では過去1年で100回以上登場するほど注目の言葉となっています。
では「リスキリング」とはいったいどんな意味なのでしょうか?この機会に「リスキリング」の意味を一緒に確認していきましょう。


リスキリングとは?

リスキリング

「リスキリング(リスキル)」は英語では“Reskilling”と書き、繰り返すという意味のある“Re”と技術を意味する“Skill”を掛け合わせた言葉です。

「技術の向上を繰り返す」「学び直し」といった意味となり、従業員の再教育や能力の再開発と言った意味で使われています。加えて現在では、時代の変化や産業構造の変化に適応する上で必要なスキルや技術、能力を従業員に身に着けさせ、企業と従業員の価値向上につなげていく戦略的な概念としても表されています。

 

「リスキリング」という言葉が広く知られるようになったのは、2020年のダボス会議です。

「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」というセッションにて、第4次産業革命に伴って求められる技術が大きく変化することへの対策としてリスキリングが提案され、世界中に広まっています。

 

第4次産業革命とは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)等を用いることで起こる技術革新と言われています。

簡単にご説明すると機械化や自動化が進み、これまで人間が担ってきた労働の一部が更に自動化されていくことです。

第4次産業革命が起こると私たちの働き方は大きく変化するでしょう。

そうすると働き方の変化により恐らく今後新たな業務が生じると考えられ、その業務を行うために必要なスキルを習得する必要が出てきます。このスキルを習得するために行うのが「リスキリング」という訳です。

日本語で「学び直し」と言うと、過去に学んだことをもう1度学びなおすイメージが出てきてしまうかもしれませんが、新たなスキルの習得と考えるととてもポジティブな取り組みだと感じませんか?

 

またリスキリングは職場での研修等による教育を前提としており、新たなスキルの習得のために仕事を辞めたり休職したりする必要はありません。企業主導と認識して頂ければ良いと思います。

リカレント

リスキリングと似た言葉にリカレント(recurrent)があります。こちらも念のため確認しておきましょう。

リカレントは社会人が現在の仕事を一定期間中断し、大学などの教育機関で学習することを指す言葉です。

こちらも「学び直し」ですが、リカレントの間は仕事を離れ、学びに専念する点がリスキリングとの大きな違いです。

またリカレントの内容は、必ずしも現時点、及び将来の職務に直結するわけではありません。比較的自分の意思で別のスキルを身に着けようとすることをリカレントといいます。

その為、職場内ではなく仕事が終わった後の平日の夜や休職して大学院に通うなどの職場の外にある教育機関で学ぶことが多いでしょう。

 

リスキリングは職場内、リカレントは職場外と同じ学び直しでも軸が違うと認識して頂ければと思います。

リスキリングが注目される理由

リスキリングが注目されている理由はいくつかありますが主な3つをご説明いたします。

ビジネス環境の変化

先程ご説明した通りAIやIT技術は日々発展しており、私たちの生活は便利になっています。

このデジタル技術を用いることで生活やビジネスが変容することをDX(デジタル・トランスフォーメーション)と言います。

しかしDX化の一方で、人間が行っていた業務をAIやロボットに奪われてしまう可能性があります。2020年に世界経済フォーラムが発表した報告によると、2025年までに8,500万人分の雇用がなくなり、9,700万人分の新しい仕事が生まれると予測しています。

予測できない変化に耐えられるように、常に変化に適応させていく必要があります。

人手不足

日本が先進国の中でも少子高齢化国家であることは皆さんご存じだと思います。

2022年に総務省が行った統計によると、労働人口の中核を占める生産年齢人口(15〜64歳)の割合は全人口の59.4%となっています。これは統計開始の1950年以来、もっとも低い数値です。

少子高齢化により人手不足が進行し、DX推進にも影響を及ぼしています。

総務省が米国・中国・ドイツ・日本の4か国を対象に行った調査では、日本がDXの課題として人材不足と回答した割合がもっとも高い67.6%でした。

平均寿命の伸び

近年では人生100年時代と言われ、これまで当たり前だった教育、就職、引退の3ステージ型のキャリアでは通用せず、マルチステージ化する時代となっています。就職せずに起業をしたり、休職して留学に行ったり、引退後に復職したり、常に時代に合わせて自分のキャリアを拓いていくことが求められているのです。

 

世界的にヒットした書籍、リンダ・グラットン氏の「ライフ・シフト」においても、人生100年時代では時代に合わせてスキルをどんどん学んでアップデートしていくことが必要だとされています。それが自分の次のステップに繋がる=人生が移り変わっていく、ということに繋がります。

 

「学ぶ」ということの重要度が上がっていることから、リスキリングへの取り組みも増えているのでしょう。

リスキリングがもたらすもの

リスキリングを行うと、会社と従業員双方にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

 

まず会社側のメリットとしては、従業員が新しい知識やスキルを学習してくれるため、今までには無かったアイデアや考えが生まれます。ひいては、新規事業の創出や既存事業のイノベーションをもたらします。

また、リスキリングをする文化が定着すれば、別の業務でも活躍できる人材が増え、結果的に会社全体の業務効率も高くなるでしょう。従業員側のメリットとしては、リスキリングを通して「学ぶ」→「実践する」のサイクルが身に付くため、より知識やスキルが深く定着します。

結果として、会社外でも通用するスキルや能力を身につけることができます。

 

実際に企業における取り組みも増えてきています。

 

富士通ではDX施策の一つとしてサービス強化や社内システムなどの内部強化のためにリスキリングを活用しています。

全従業員をDX人材として育成することを目標とし、2020年1月にはDX専門の子会社である「Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社」を設立しました。社外の企業のDX推進も行うべく、様々な業界・業種と協業しながら最適化したサービスを展開し、日本全体のDX化の底上げを始めています。

日立製作所はデジタルスキルを持つ人材の強化に向け、国内グループ企業の全従業員16万人にDX研修を実施しており、キャノンも新規ビジネスの展開に合わせ、デジタル技術を持つ従業員の増員を目的に日デジタル人材を対象としたリスキリング推進を開始するなど、大手企業が続々リスキリングを進めています。

 

皆様がお勤めされている企業ではまだリスキリングが行われていなくとも、今後リスキリングが導入される可能性は極めて高いと言えるでしょう。

まとめ

ここまでお読み頂きありがとうございます。リスキリングについて理解を深めて頂けましたでしょうか?

 

デジタル技術の急速な発展が進む世の中において、企業と働く従業員には変化への適応力が求められています。

リスキリングを進めるのは企業である為、お勤めの企業が学びの機会を提供してくれるのであれば積極的に参加することで新しい知識を身に着けることができ、企業にとって価値のある人材として長く働き続けることができます。

また企業側はリスキリングを正しく活用することができれば、変化に耐えうる社内人材を育成することができます。

リスキリングは企業・従業員どちらにもメリットがあります。しかし、リスキリングに集中してしまうと従来の業務が疎かになってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

 

DX化する世界に適応する為、変化を恐れずにリスキリングしていきましょう。

 

 

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