2023.03.01
ウェルビーイングって何?変化する社会の波に乗ろう
「ウェルビーイング」という言葉を耳にしたことはございますか?実は筆者は昨年この言葉を初めて聞きました。この「ウェルビーイング」という言葉は世界経済フォーラムの年次総会、通称ダボス会議でも議論に上がり、今後さらに浸透していくと考えられている言葉です。日本でも美術展のタイトルに取り入れられるなど、目にする機会が増えています。では実際どんな意味を持つのか、何のための言葉なのかご存知でしょうか?
今回は「ウェルビーイング」について詳しく解説して参ります。
ウェルビーイングとは?
ウェルビーイングの意味を解説!
「ウェルビーイング」とは、「良い」という意味のウェル(well)と、「状態」を表すビーイング(being)の2語から成り立つ言葉です。ウェルビーイングは「良い状態」、つまり身体的・精神的・社会的に良好な状態にあり、満たされて幸福という状態を指します。
元々の起源はイタリア語のベネッセレ(benessere)であり、「健康的な」「幸せな」といった意味を持つ概念を指すと言われています。
ウェルビーイングという言葉が話題に上がるようになったのは最近ですが、この言葉が初めて登場したのは1946年になります。世界保健機関(WHO)が設立された際、世界保健機関憲章で「健康とは、単に疾病がない状態ということではなく、肉体的、精神的、そして社会的に、完全に満たされている状態にある(”Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”)」と定義されています。
簡単に言ってしまえば全てが満たされ、総合的に幸せだと感じることができる状態だと言えるでしょう。
ウェルビーイングとグレート・リセット
ウェルビーイングと切り離すことのできない概念に「グレート・リセット(The Great Reset)」があります。グレート・リセットの意味はより良い世界をもたらすために私たちの社会と経済のあらゆる側面を見直し、刷新することです。グレート・リセットの為には私たちの生活がウェルビーイングであることが重要視されています。
この言葉は世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ氏による発言の影響が大きいと言えます。シュワブ氏は2021年のダボス会議に先駆けて「第二次世界大戦後から続くシステムは環境破壊を起こし、持続性に乏しく、もはや時代遅れだ。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」と発言していました。残念ながらこの年のダボス会議は中止となりましたが、グレート・リセットとウェルビーイングのムーブメントは大きく広がっています。
元々2021年のダボス会議では従来の経済を中心とした社会システムから、幸福中心の社会への転換が示唆される予定でした。しかし新型コロナウイルスの流行によりこれまでの社会の仕組みでは新しい問題に対応できなくなっているという事実を、ダボス会議の中止という形で突き付けられました。
私たちは今社会のシステムの転換点にいる、ということですね。
ウェルビーイングの5つの要素
米国のマーティン・セリグマン博士は、ウェルビーイングを科学として理論的に測るための5つの要素「PERMA」を提唱しました。
①ポジティブ感情(Positive Emotions
ポジティブ感情は嬉しい、楽しい、面白いなどの明るい気持ちのことを言います。
②エンゲージメント(Engagement)
エンゲージメントとは、時間を忘れるほど何か積極的になることです。
例えば仕事に完全に没頭していて、振り返ってみると自分にとって時が止まっていると感じる状態のことを表します。フロー状態とも言い換えることができます。
➂関係性(Relationships)
関係性とは他者との良い人間関係のことを示します。
他者のことを助けたり、何かを与えたりすることが重要だと言えるでしょう。
④意味・意義(Meaning)
意味・意義とは、人生の意味や仕事の意義がはっきりしており、目的を追求できているかが関係してきます。
⑤達成(Accomplishments)
達成とは何かを成し遂げることです。
5つが個人の幸福を構成する要素とされています。
一人当たりのGDP、 社会的支援 、人生の選択の自由度、寛容さ、 腐敗度、健康寿命の6つの項目で幸福度を算出する国連の世界幸福度報告(World Happiness Report)というレポートがあります。これによると所得格差よりも生活満足度格差の方が幸福度への悪い影響が大きいということが分かっています。つまりお金を持っているかどうかよりも、自分の生活が豊かかどうかの方が人々に重要視されているということになります。
幸せかどうか、満たされているかどうかというのは人によって違う上にとても主観的なものですが、数値化して見える形になりつつあります。
なぜ今ウェルビーイングが重要視されるのか?
ではなぜ今ウェルビーイングが重要視されているのか?社会が変わろうとしているのか、理由はいくつかありますが今回は3つほどご説明していきます。
変化する価値観
人類がここ数十年の間に驚異的な繁栄と進歩の道を歩んできたことは皆さんもご存知だと思います。人類はこの発展により、物質的な幸福を手にしました。しかし一方で所得と富の格差が広がり、格差・不平等が当たり前の世の中になったり、地球環境の破壊を引き起こしたり、物質的な豊かさが世界的な課題を引き起こしているという現実に直面しています。「モノ」の豊かさから「心」の豊かさへと価値観が変化して、世界規模でより良い社会をつくる方向へと変わろうとしていることが影響しているでしょう。
人材不足と企業の在り方
日本では少子高齢化が進む中で、やがて深刻な労働力不足に陥ると予測されています。古くから根付いていた終身雇用制度は過去のものとなり、若い世代を中心に転職へのハードルは下がり、寧ろキャリアアップの手段と捉えられているほどです。
今後企業に求められてくるのは「従業員の幸福」を重要視することです。従業員の幸福度を高めることで企業にとっても良い影響があると考えられています。
新型コロナウイルスの拡大
新型コロナウイルスの流行拡大は、私たちの生活を大きく変化させ、自分の働き方や暮らし方、幸福について考えるきっかけになったと思います。
リモートワークが急速に普及したことで働き方が変化した人も多くいると思いますが、一方で出社せず家で仕事をすることによるコミュニケーション不足やメンタル、ストレス等の問題も浮き彫りになっています。
その為、やりがいを持って仕事をするための考え方としてウェルビーイングに注目が集まっています。
日本におけるウェルビーイングの取り組み
日本はかつて高度経済成長期にGDPが世界2位にまで上がりました。今は停滞しているように思えるかもしれませんが、ウェルビーイングの観点で言えば、世界のほかの国々と比べ格差の少ない社会を築いたという点で1つのモデルとされています。経済発展を全ての人々に公平に行き渡らせる必要があるとシュワブ氏も発言しています。
しかし日本は幸福度の自己申告が先進国の中で下位に位置しているという事実があり、政府は満足度・生活の質に関する調査等を通してウェルビーイングを推進しています。
また「ムーンショット型研究開発制度」というプロジェクトを立ち上げ、「2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現する」ことを目標に掲げています。
まとめー将来に向けてウェルビーイングについて考えよう!ー
ウェルビーイングについての意識が個人の中に生まれ、この意識を持つ人たちが増えると社会の枠組みやシステムの変換や新たな取り組みという具体的な変化に繋がっていくでしょう。平等な社会であることはまだしも、まだまだ日本でもウェルビーイングが普及しているとは言えない状況です。私たちが幸福でより良く過ごせる社会を目指して、できることから行動していきたいですね。
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