2022.11.09
不動産の価格はどうやって決まる?購入する時に知っておきたい基礎知識
マイホーム、投資用不動産に関わらず、不動産購入を検討されている方にとっては、買おうとしている不動産の提示されている金額が適正なのかどうかは非常に気になるところであると思います。不動産の売買価格はどのように決まっていくのでしょうか。
今回は、不動産の鑑定評価基準について、価格形成の要因や3つの価格鑑定の手法を解説します。
不動産購入を検討されている方、売却を考えている方は知っておくべきポイントをまとめます。
不動産鑑定評価基準とは
不動産は所有者の大切な財産になりますが、その価値を明確にすることは難しいです。
相場を調べることはできてもあくまで相場であり、実際の価値ではありません。
そこで不動産の価格決定のマニュアルとして、「不動産鑑定評価基準」という、不動産の価値を鑑定する論理的な基準が定められていて、不動産の価格決定はこのマニュアルに基づいて行われるべきとされています。
ですので、基本的には提示されている金額は、売り主である不動産業者があてずっぽうで金額を設定しているのではなく、マニュアルに従って設定されています。
仲介で不動産を購入しようとしている場合は鑑定評価された金額とは乖離がある場合があり、売り主側の都合で売り主の言い値が提示されている場合もあるので注意が必要です。
価格形成の要因
不動産の価格形成の要因としては、一般的要因、地域要因、個別的要因の3つの要因に分類されます。不動産の価格の決定には、これらの要因の因果関係を分析していくことが重要なステップとなります。
ひとつずつ解説します。
一般的要因
一般的要因とは、社会流行や、生活様式の移り変わりによるニーズの変容、経済的要因など、一般社会の状況に応じて影響を受ける要因のことです。
例としては、一昔前は郊外に戸建て住宅を持つことがステータスとされていましたが、今は駅近で都心のマンションが人気、だからマンションの価格は高騰する、というようなイメージです。
地域要因
地域要因とは、不動産が所在する地域の特性に影響を受ける要因のことです。同じ建物だったとしても、宅地や農地など、各地域の特性に応じて価格が変わってきます。
例えば東京駅周辺の不動産と、山奥にある不動産の価値が違うのはこの地域要因によるものです。
個別的要因
個別的要因とは、その不動産そのものの特徴によって影響を受ける要因のことです。
具体的にはガスは都市ガスなのか、プロパンガスなのかや、電気が通っているか等によって価格が変わってきますがこれは個別的要因です。
不動産を買う側の立場としてこれらの要因で不動産の価格が鑑定評価されていることを意識すると、当たり前のことかもしれませんが、社会情勢、立地などから、需要のありそうな不動産の価格は高くなり、残念ながらそうではない不動産の価格は低くなることが分かります。
需要があって人気があるけれど、価格は低いという不動産があるなら、それは何か不具合があったり、性能が劣る設備が付いているなど、その不動産の個別的要因に何か原因があるということが伺えるでしょう。
立地がいいのに安い不動産を見つけたら、何かあると考え購入前に入念なチェックをすることをお勧めします。
鑑定評価の3つの手法
不動産の価格を決める鑑定評価の手法は、収益還元法、原価法、取引事例比較法の3つに分けられます。
不動産の価格を決めるにあたり、基本的にはこれらの3つの手法を単独で採用するよりは、適切に組み合わせて決定されるべきとされています。
その3つの手法について解説します。
収益還元法
収益還元法とは、その不動産の収益性に着目し、将来的にいくらの収益をもたらすかをもとに、現在の不動産の価値を決定する手法です。
厳密には、その不動産の毎月の家賃や更新料等の総収益から、不動産の管理費用や固定資産税等の総費用を引いた総収益の現在価値の総和をもとに、計算されます。
合理性が高く、賃貸用不動産や、事業用不動産の価格を決定するのには特に有効で、賃貸用不動産に融資する金融機関の多くが採用しています。
収益性とは言うものの、マイホーム用の不動産にも適用可能で、その場合はもしマイホームを賃貸に貸し出したらいくらの収益が出るかを試算し、価格を決定します。
収益還元法で計算された価格を収益価格と言います。
収益還元法にはさらに2種類あり、直接還元法とDCF法に分けられます。
直接還元法による収益価格は、1年間に得られる純利益÷期待される還元利回りで求められます。
DCF法は、不動産が将来的に生み出すと予想される各期間の純収益や、売却時の予想価格を現在の価値に換算しその合計から不動産の価格を求めます。詳細な計算が求められ、不動産投資信託の評価に使われます。
バブル期以前は以下で解説する原価法と取引事例比較法を主に使って不動産は評価されていました。しかしその2つでは土地の異常な価格上昇を抑えられず、バブル崩壊、土地神話の崩壊の教訓から、バブル期以降は収益還元法の重要性が増しています。
原価法
原価法とは、その不動産の再調達価格を求め、減価修正をして不動産の価格を求める方法です。簡単に言い換えると、その不動産を今作り直したらいくらになるのか?を求め、その後築年数の経過などの価値低下分を差し引いて求めた金額ということです。
原価法で計算された価格を積算価格と言います。
原価法は再調達原価や、減価分が正確に分かる場合は有効な方法ですが、すでに市街地になっているエリアの土地など、再調達価格や原価修正が正確でない場合は適用できません。
取引事例比較法
取引事例比較法とは、周辺の類似物件の実際の取引事例をもとに、価格を求める方法です。
多数の周辺の類似物件の取引事例の中から、不適切な価格(売り急いだ物件など)の事例は除き、さらに地域要因や個別的要因を考慮して求められます。
取引事例比較法で計算された価格を比準価格と言います。
より精度を高めるために類似取引事例が多くあることが必要です。
また、個別的要因を考慮することから、不動産鑑定士によっては評価にずれが生じることがあります。
まとめ
不動産を購入、または売却をするときの価格を決める要因としては、一般的要因、地域要因、個別的要因の3つがあり、これらの要因をそれぞれ鑑みながら価格が決まります。
また、価格決定の手法も3つあり、収益還元法、原価法、取引事例比較法を適切に組み合わせて適用します。
これらのことをすべて自分で調べよう、調査しようとすると、まずは不動産鑑定士の資格を取得しなければなりません。非常に難関資格であるため、不動産購入や売却が相当先延ばしになる可能性もあります。
であれば、これらのことをしっかりと理解し、説明してくれる、信頼できる不動産会社をパートナーに選ぶ方が合理的でしょう。
不動産を購入、売却する際は頼れる不動産会社の選定から入ることがお勧めです。
おまけ ~地価について~
土地の価格、地価にはいくつかの種類があるのはご存知でしょうか。
公示地価、基準地価、相続税評価額、固定資産税評価額、それぞれ簡単に特徴をまとめてみますので、今後の参考にしてみて下さい。
公示地価 | 基準地価 | 固定資産税評価額 | 相続税評価額 | |
---|---|---|---|---|
決定機関 | 国土交通省 | 都道府県 | 市町村 | 市町村 |
基準日 | 1月1日 | 7月1日 | 3年毎1月1日 | 1月1日 |
公示時期 | 3月 | 9月 | 4月頃 | 7月頃 |
内容 | 一般的な土地取引の指標 | 一般的な土地取引の指標 | 固定資産税・不動産取得税の計算基準 | 相続税・贈与税の計算基準 |
評価水準 | 100% | 100% | 70% | 80% |
いかがでしたでしょうか。
少し難しい専門用語も多いですが、ぜひ頭の片隅に入れておいて頂ければお役に立てるかもしれません。
また、専門的なことはわからないけど、適正な価格で不動産を買いたい!売りたい!という人はまずは知識があり、信頼できる不動産会社や営業マンを見つけ、何でも相談ができるパートナーにしてください。
USTRUSTでは不動産関連資格、金融関連資格保有者が多数在籍しています。
不動産売買の際はぜひご相談ください。
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