2025.04.04

年金っていつから受け取る?|お金のみらいナレッジ

日本の公的年金制度は、老後の生活資金を支える大切な柱です。
原則として65歳から受給が始まる年金ですが、実は繰上げ受給や繰下げ受給といった制度を活用することで、受給開始年齢を60歳から75歳まで選択できるのをご存知でしょうか。
どのタイミングで年金を受け取るかは、受給額や生活設計、さらにはライフプラン全体に大きな影響を与えます。
ここでは、年金受給のタイミングについて、そのメリット・デメリットやリスク、さらには実際のシミュレーションを交えながら詳しく解説していきます。

受給開始年齢と仕組み

日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2つから構成され、原則として65歳から支給されます。

しかし、年金は「申請主義」であり、受給開始時期を自分で選択できるため、60歳から繰上げ受給、または66歳以降の繰下げ受給が可能です。

繰上げ受給の場合、受給開始年齢を早めることによって、月々の年金額が一定の割合(生年月日によって0.4%または0.5%/月)減額されます。一方、繰下げ受給では、受給開始を遅らせるごとに0.7%/月の増額が受けられ、最長で75歳まで延ばすことができます。

たとえば、65歳で年金を受給する場合の基準額が200万円だとすると、70歳に繰下げると284万円、75歳にすると368万円といった増加が期待できます。​

受給開始年齢ごとの特徴

繰上げ受給の特徴

繰上げ受給は、早期に生活資金が必要な場合に有効です。

例えば、60歳から受給を開始すると、減額率が毎月0.4%か0.5%(生年月日により異なる)となり、実際には受給額が大幅に下がります。具体例として、65歳で月15万円受給予定の方が60歳で受給開始すると、月11.4万円程度に減るケースが挙げられます。

メリット早期に一定の収入を確保できるため、退職後の生活資金に余裕がない場合には安心感がある。
デメリット生涯受給額が減少するため、長生きした場合には不利になる可能性がある。受給開始後は制度変更ができないため、一度決めると変更が難しいというデメリットも。

繰下げ受給の特徴

一方、繰下げ受給は、健康で長生きする見込みがある方や、受給開始までの生活費を他の収入や貯蓄でカバーできる場合に有利です。たとえば、65歳受給を基準に、70歳受給にすると42%、75歳受給にすると84%増額が適用され、受給月ごとの金額が大きくアップします。​

メリット受給額が増えるため、長生きした場合に生涯トータルの受給額が大幅に向上する。 老後の長生きリスクに備える有力な手段となる。
デメリット受給開始までの期間、年金以外の収入や貯蓄で生活資金を補う必要がある。 万が一、健康上の理由などで早期に亡くなった場合、繰下げの恩恵が享受できず損をするリスクがある。 増額分は額面上の金額であり、税金や社会保険料の負担が増加する可能性がある。

受給タイミングの判断ポイント

年金受給開始のタイミングを決める際には、以下の4点が重要な判断基準となります。

1.健康状態

・自分自身の健康状態や家族歴、現在の体調を踏まえ、将来的な長寿リスクを考慮する。
・病気や重大な健康リスクがある場合は、早期受給を検討するのも一つの選択肢となる。

2.貯蓄状況

・年金受給開始までの無収入期間をどの程度カバーできるかが重要。
・十分な貯蓄や他の収入源があれば、繰下げ受給による増額メリットを享受できる可能性が高い。

3.65歳以降の収入

・退職後もアルバイトやパート、再就職などで収入がある場合は、早期の年金受給に依存しなくても良い。
・逆に、65歳以降の収入が不安定な場合は、早めに年金を受け取ることで生活資金の確保が必要。

4.家族や周囲のサポート

・配偶者や家族の収入・資産状況、またはサポート体制によっても、受給開始のタイミングは変わってくる。
・たとえば、配偶者がしっかりと収入を確保している場合、無理に早期受給をする必要はなく、繰下げによる増額を狙える。

これらの判断ポイントを総合的に勘案して、自身のライフプランに合った受給開始時期を選択することが、後悔のない年金設計につながります。​

シミュレーションで考える受給タイミング

具体的な例で考えてみましょう。たとえば、65歳で月15万円、年間180万円の年金を受給するケースを前提にします。

 

さらに、受給開始時期と生涯受給総額との「損益分岐点」も考慮する必要があります。たとえば、70歳受給の場合、約81歳11ヶ月までに受給総額が65歳受給と同額になるとされています。長生きすることが前提となるため、平均寿命や自分自身の健康、生活設計を慎重に見極めることが重要です。​

ケース1:繰上げ受給

60歳で受給開始する場合
→ 1ヶ月あたり0.4%の減額×60ヶ月=24%減
→ 月受給額は約11.4万円(年間約136.8万円)となる。
→ 早期に受給できる反面、長期的には受給総額が減少。

ケース2:標準受給

65歳で受給開始する場合
→ 基本額の月15万円(年間180万円)
→ 長寿であれば、生涯受給総額としてバランスが取れている。

ケース3:繰下げ受給

70歳で受給開始する場合
→ 1ヶ月あたり0.7%の増額×60ヶ月=42%増
→ 月受給額は約21.3万円(年間約255.6万円)となる。
→ 受給開始までの生活資金の確保が課題となるが、長生きすれば大きなメリットに。

さらに、受給開始時期と生涯受給総額との「損益分岐点」も考慮する必要があります。たとえば、70歳受給の場合、約81歳11ヶ月までに受給総額が65歳受給と同額になるとされています。長生きすることが前提となるため、平均寿命や自分自身の健康、生活設計を慎重に見極めることが重要です。​

年金以外の老後資金対策

年金受給額を最大化するための方法として、年金制度自体の工夫だけでなく、公的年金以外の資産形成も視野に入れることが大切です。マネックス証券メディアの記事では、私的年金制度(国民年金基金や付加年金)、個人型確定拠出年金(iDeCo)、さらにはNISAなどの資産運用による老後資金形成の重要性が指摘されています。

【私的年金制度】
・国民年金基金や付加年金は、加入条件や掛金のメリットがあり、年金額の上乗せ効果が期待できる。

【iDeCo】
・掛金が全額控除対象となり、運用益も非課税となるため、老後資金の効率的な形成が可能。

【NISAなどの資産運用】
・長期投資によって複利効果を狙いながら、税制上の優遇措置を活用し、余裕資金を増やしておくことで、年金受給とのバランスを取ることができる。

これらの制度を上手に組み合わせることで、年金の受給タイミングに左右されず、安心して老後を迎えるための資金計画が立てられます。​

最適な年金受給タイミングを見極めるために

年金受給のタイミングは、一概に「これが正解」とは言えず、各人の健康状態、貯蓄状況、退職後の収入、そして家族のサポート体制など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

 

・早期受給(繰上げ)は、短期的な収入確保には有効ですが、生涯受給総額が減少するリスクがある。
・繰下げ受給は、健康で長生きする見込みがあり、また受給開始までの生活資金が十分に確保できる場合、非常に有利な選択肢となる。
・また、年金だけに依存せず、私的年金やiDeCo、NISAなどを組み合わせた総合的な資産形成が、老後の安心につながる。

 

最終的には、自身のライフプラン全体を見据え、将来のリスクとメリットを天秤にかけた上で、最も適した受給開始時期を選ぶことが求められます。専門家と相談しながら、シミュレーションを重ね、情報をアップデートしていくことが、後悔のない年金設計への第一歩です。

以上のように、年金受給のタイミングは単なる数字の問題ではなく、人生設計全体に影響を与える重大な判断です。老後の安心と豊かな生活を実現するために、今一度、自分自身の状況と将来設計を見直し、最適な選択をすることが大切です。

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